永住者
永住者とは、在留資格「永住者」の資格の許可を受けた者のことを言います。
永住者の在留資格を得ると様々な職業に就けるようになります。
また在留資格の更新が不要になるなど、他の在留資格に比べて優遇されています。(在留カードの携行義務はあります)
そのため以下のように厳しい条件が設けられています。
永住者の条件
原則10年以上継続して日本に在留していて、下記の3つの要件を満たす外国人が対象になります。(日本人と結婚している場合は3年で良いなどの特例も有ります)
1. 素行が良好であること
2. 独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること
3. その者の永住が日本国の利益に合すると認められること
(ただし、日本人・永住者または特別永住者の配偶者またはその子の場合は1・2に適合することを要しません)
以上の条件を満たし、申請によって許可が下りると「永住者」の在留資格を得ることが出来ます。
それでは1つずつ条件を詳しく見ていきましょう。
ここでは、「審査基準 永住許可に関するガイドライン(令和元年5月31日改定)」等を参照しています。
1.素行が善良であること
法律を遵守し日常生活においても住民として社会的に非難される事のない生活を営んでいること
具体的には、以下のような場合に該当しない事が必要です。
@ 日本の法令違反で懲役・禁錮・罰金に処せられたことがある者。
「刑の消滅の規定の適用を受ける者」又は「執行猶予の言渡しを受けた場合で当該執行猶予の言渡しを取り消されることなく当該執行猶予の期間を経過し、その後更に5年を経過した者」は、これに該当しないものとして扱われます。
刑の消滅の規定とは下記のとおりです。(刑法第34条の2)
(1)禁錮以上の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで 10年を経過したときは、刑の言渡しは効力を失う。罰金以下の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで5年を経過したときも、同様とする。
(2)刑の免除の言渡しを受けた者がその言渡しが確定した後、罰金以上の刑に処せられないで2 年を経過したときは、刑の免除の言渡しは、効力を失う。
A 少年法による保護処分(1号・3号)が継続中の者。
保護処分の1号とは保護観察所の保護観察に付することであり、3号とは少年院に送致することです。
B 違法行為や風紀を乱す行為を繰り返し行うなど、素行善良と認められない事情がある者。
「@ 日本の法令違反で懲役・禁錮・罰金に処せられたことがある者」に該当しないような軽微な法違反であっても同様の行為を繰り返し行うような場合や、地域社会に多大な迷惑を及ぼす活動を繰り返し行う者が該当します。
例えば、交通違反の反則金は罰金ではありませんが、何度も繰り返すような場合にはこれに該当します。また反則金や罰金がなくとも街宣活動などで何度も指摘を受けているような場合にもこれに該当します。
2.独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
日常生活において公共の負担にならず、その有する資産又は技能等から見て将来において安定した生活が見込まれることが求められます。
具体的には、下記の両方を満たす必要があります。
@ 日常生活において公共の負担となっていない
生活保護を受けていないこと、納税義務を果たしていること、公的年金や社会保険などの納付義務を果たしていることが必要です。
A 職業・収入・資産等から見て将来において安定した生活が見込まれる
将来的に@の状態が継続すると見込まれる職業・収入・資産を有することが必要です。
収入においては世帯収入で判断されます。
申請人自身が収入ゼロでも配偶者などの収入によって許可となる場合があります。
また収入や資産については明確な基準があるわけではありません。
子などの扶養者が多ければ、より多くの資産や収入が求められます。
3. その者の永住が日本国の利益に合すると認められること
次のすべてに該当することが求められます。
@ 居住要件:定められた期間、日本に居住していること
下記の両方を満たす必要があります。
(1)現在留資格の在留期間が3年以上であること
(2)下記のとおり定められた一般原則の期間、または特定の者に関しては特例期間、日本に在留していること
原則として引き続き10年以上本邦に在留していること。
ただし,この期間のうち,就労資格(在留資格「技能実習」及び「特定技能1号」を除く。)又は居住資格をもって引き続き5年以上在留していることを要する。
現に有している在留資格について,出入国管理及び難民認定法施行規則別表第2に規定されている最長の在留期間をもって在留していること。(当面,在留期間「3年」を有する場合は,「最長の在留期間をもって在留している」ものとして取り扱われます。)
原則10年在留に関する特例
@ 日本人,永住者及び特別永住者の配偶者の場合,実体を伴った婚姻生活が3年以上継続し,かつ,引き続き1年以上本邦に在留していること。その実子等の場合は1年以上本邦に継続して在留していること
実体を伴う結婚であることを要し、同居しているかどうかなどについて申請人の配偶者にも確認して事実認定を行われます。また扶養関係にあるかどうかは要求されません。
実子等の場合も扶養関係にあるかどうかは要求されません。また年齢制限もありません。しかし学生または就職活動中または社会人であることを要し、一般的な社会生活を行っていない場合は公共の負担になる恐れがあるとして条件に適合しません。
A 「定住者」の在留資格で5年以上継続して本邦に在留していること
離婚定住のような「日本人の配偶者等」ビザから「定住者」ビザに変更があった場合は、「日本人の配偶者等」ビザの在留期間も含めてもよいとされております。
B 難民の認定を受けた者の場合,認定後5年以上継続して本邦に在留していること
C 外交,社会,経済,文化等の分野において我が国への貢献があると認められる者で,5年以上本邦に在留していること
D 地域再生法(平成17年法律第24号)第5条第16項に基づき認定された地域再生計画において明示された同計画の区域内に所在する公私の機関において,出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の規定に基づき同法別表第1の5の表の下欄に掲げる活動を定める件(平成2年法務省告示第131号)第36号又は第37号のいずれかに該当する活動を行い,当該活動によって我が国への貢献があると認められる者の場合,3年以上継続して本邦に在留していること
E 出入国管理及び難民認定法別表第1の2の表の高度専門職の項の下欄の基準を定める省令(以下「高度専門職省令」という。)に規定するポイント計算を行った場合に70点以上を有している者であって,次のいずれかに該当するもの
ア 「高度人材外国人」として3年以上継続して本邦に在留していること。
イ 3年以上継続して本邦に在留している者で,永住許可申請日から3年前の時点を基準として高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に70点以上の点数を有していたことが認められること。
F 高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に80点以上を有している者であって,次のいずれかに該当するもの
ア 「高度人材外国人」として1年以上継続して本邦に在留していること。
イ 1年以上継続して本邦に在留している者で,永住許可申請日から1年前の時点を基準として高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に80点以上の点数を有していたことが認められること。
A 法令遵守要件:納税義務や公的年金、社会保険などの公的義務を履行していることを含め、法令を遵守していること
罰金刑や懲役刑などを受けていないこと。公的義務(納税,公的年金及び公的医療保険の保険料の納付並びに出入国管理及び難民認定法に定める届出等の義務)を適正に履行していること
納税申告だけではなく、遅滞なく納税義務を完納していることが求められます。
ただし、会社員などの場合は事業者が代わりに納付しますが、事業者都合で納税義務を果たしていない場合は、そのことをもって不許可となるわけではありません。
また申請人が扶養を受けている場合、扶養している側も公的義務なども含めて法令を遵守している必要があります。
B 公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと
公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと。
特定の感染症疾患者や慢性中毒者などが公衆衛生上有害となるおそれがあるとして取り扱われます。
C 著しく公益を害する行為をするおそれがないと認められること
過去と現在の状況を総合に判断して将来的に公益を害する行為をしないだろう推察されることが必要です。考えとしては前述した素行善良要件の@ABに該当しないことが重要です。
D 公共の負担となっていないこと
配偶者等の特例
日本人,永住者又は特別永住者の配偶者又は子である場合(「子」は実子・(普通)養子・特別養子を含む)には,
1.素行が善良であること
及び2.独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
に適合することを要しない(審査されません)。
また,難民の認定を受けている者の場合には,
2.独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
に適合することを要しない(審査されません)。
その他の注意事項
継続在留期間と出国期間の関係
永住ビザを取得するためには継続した在留が10年以上必要であったり、特例によって3年以上等と定められております。
この間に出国した場合にリセットされるのか否かについては、正確には期間だけで判断されるものではありません。
日本に生活基盤がないような場合でも、長期出国の理由・過去の出国期間・家族状況・今後の日本における活動及び生活の計画などを総合的に判断されます。
例えば、会社員として就労ビザを有している外国人が、会社から長期出張の支持があった場合で、支持のあった長期出張期間終了後は日本で生活すると見込まれる場合は、合理的な理由として判断されます。
また、日本で生活していた外国人が災害により家を失う等特別な事情で日本から出国せざるを得なかった場合もやむを得ない事情があったとして認められる場合があります。
永住許可申請中における現在留資格の期限に関する注意
在留期間更新許可申請の場合は、在留期限ギリギリで申請しても特例期間として2か月間の在留延長がなされます。
しかし永住許可申請の場合はそのような特例期間の適用ありません。
従って、永住許可申請中であっても在留期限が切れそうな場合は、在留期間更新許可申請をしなければなりません。
家族滞在ビザを有する子がいる者が単独で永住ビザ申請をする場合の注意
家族滞在ビザの該当性は「技術・人文知識・国際業務」ビザなどの就労ビザを有する者から扶養を受けて日本で生活をする必要がありますが、永住ビザを有する者から扶養を受ける場合は家族滞在ビザの該当性を満たしません。
このような場合は家族滞在ビザから定住者ビザへ在留資格変更を検討することになりますが、子が成人に達してしまっている場合などはこれも適用できません。
こうなると家族滞在ビザを有する子はどのビザにも該当しない状況となってしまいます。
永住ビザを他のビザに在留資格変更する
基本的に永住ビザは活動内容や在留期間において優遇されているので、永住ビザから他のビザへ変更するメリットはあまりありません。
しかし家事使用人や親の帯同という点では高度専門職ビザや経営管理ビザに変更するメリットがある場合があります。
このような場合には、要件に適合し、かつ、変更する理由に合理性があると認められれば許可されます。
特別永住者
永住者と似た制度で「特別永住者」という制度があります。
1991年(平成3年)11月1日に施行された「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(入管特例法)」に定められた在留資格を有する者を、特別永住者といいます(永住者は「出入国管理及び難民認定法」)。
第二次世界大戦中に、日本の占領下で日本国民とされた在日韓国人・朝鮮人・台湾人の人たちが、敗戦後の1952年のサンフランシスコ平和条約で朝鮮半島・台湾などが日本の領土でなくなったことにより、日本国籍を離脱しました。
その在日朝鮮人・韓国人・台湾人とその子孫について、日本への定住などを考慮したうえで、永住を許可したのが、特別永住権です。
特別永住者証明書の交付申請をして法務大臣から許可された人を、特別永住者といいます。
申請先は、在留資格が地方入国管理官署なのに対し、特別永住者証明書の交付申請は居住地の市区町村窓口になります。
永住者と特別永住者の違い
永住者には
1.素行が善良であること
2.独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること
などの許可要件がありますが、特別永住者は、入管法に「特別永住者の配偶者または子である場合においては、
上記の各号に適合することを要しない」と定められています。
つまり、特別永住者は、働かず生活能力がなくても、犯罪歴があっても、日本に住み続ける権利を法律が保障しているということです。
また、永住者は在留カードの携行義務がありますが、特別永住者には証明書の携行義務がないなどの違いがあります。